【西野亮廣エンタメ研究所】オンラインサロン バックナンバー

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2018年1月5日の投稿【児童小説『えんとつ町のプペル』プロローグ】

※この記事は2018年1月5日に投稿された記事です。

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【もう小説すらオープンイノベーションで作ってやろうかしら】

 

児童小説『えんとつ町のプペル』の「はじめに」の部分を公開します。

 

「もっと、こういう言い回しの方がいいんじゃない?」というのがあれば、ドシドシ意見をください。

 

《プロローグ》

 

ボクの名前はスコップ。炭鉱夫だ。

 

 商売道具は、「無煙火薬」と「お喋り」。

 

 煙の出ない火薬で穴を掘って掘って掘り進め、ヤバい場面に出くわしたら、お喋りで切り抜ける。

 

 ま、そんな感じ。

 

 

 

 ところで、こうして穴を掘っていると、時々、珍しいものに出くわす。

 

 「植物」の化石だ。

 

 「植物」のことを地上の連中に話しても無駄。地上には「植物」は存在しない。

 

 目で見えるものだけを信じ、見えないものは信じない。それが連中のルールだ。

 

 しかし、その昔、「植物」は存在したらしい。

 

 

 

 ウチは代々、炭鉱夫で、このことは爺ちゃんがコッソリ教えてくれた。

 

 もっとも、こうして喋ることは禁止されてるけどね。

 

 こんな話をしているところを異端審問所に見つかったら大変な目に遭うし、なにより、この話自体が爺ちゃんの作り話かもしれない。

 

 それでもよければ、話半分で聞いてくれ。この町ができるまでの物語だ。

 

 それは昔々、遠い国で始まった。

 

       

 

 経済が破綻し、ずいぶん荒れた町があった。

 

 盗みや人殺しは日常茶飯事。

 

 人々は、単なる交換手段にすぎなかった『お金』に生活を支配され、心を支配され、ついには奪い合いを始めた。

 

 その流れに「待った」をかけたのが、シルビオ・レター。町の経済学者だ。

 

 レターは、あらゆる物が時間の経過と共に腐り、その価値を下げていくにもかかわらず、「お金」だけが腐らないことを問題視した。

 

 いつまでたっても「お金」だけ腐らないもんだから、肉よりも、魚よりも、「お金」を持つ者が力を持ってしまい、「お金」の奪い合いが始まると彼は説いたんだ。

 

 

 

 そこで彼が提案したのが、人の手に渡ってから4ヶ月で腐るように設計された新通貨『L』だった。

 

こいつが大当たり。

 

 貯め込んでいても、4ヶ月で腐ってしまうので、人々は積極的に『L』を使い、経済が回った。

 

 失業者が減り、犯罪者が減り、町は大いに賑わいだ。

 

 それは、シルビオ・レターによる「お金の奴隷解放宣言」だった。

 

 ところが、その時代も長くは続かなかった。

 

 正確には続けさせてもらえなかった。

 

 〝腐るお金〟が普及してしまうことで都合が悪くなるヤツらがいたんだ。

 

 お金を貯め込むことでブクブク生きている連中だ。

 

 まもなく街にやってきたのは不気味な七人の男たち。

 

 黒い衣を身にまとい、黒い馬にまたがり、青い肌をして、なんだがイヤな感じだ。

 

中央銀行よりまいった」

 

 男たちは、レターを取り囲み、逮捕状を突き出した。

 

 そこに書かれていたのは、『L』の即時廃止命令と、シルビオ・レターの出頭命令。

 

「この町はお金の奴隷から解放され、ようやく自由を手に入れた。何故、中央が、それを奪う?」

 

「我々に意思はない。我々に答えを求めるな。これらすべては中央の意思だ」

 

「愚かだ」

 

「余計なことは考えるな。お前にも家族がいるだろう? ご同行願おう」

 

 レターには命を賭けてでも守らなければならない妻と、まだ14歳の息子がいた。

 

 レターは、国民を混乱させたという理由で処刑。

 

 火あぶりにされ、煙になった。

 

 当然、『L』も廃止。

 

 街の人々は涙にくれたが、ところがどっこい、レターの魂は途絶えなかった。

 

 息子のカルロス・レターを中心に、家族や仲間達が、『L』の復活を誓ったんだ。

 

 彼らは、もう2度と『L』が潰されぬよう、中央の手が届かない土地を求め、長い長い航海に出た。

 

 そして、見つけたのが海面からそびえたつ切り株のようなヘンな島。

 

 海から続いていた巨大な洞窟を抜けると、そこに広がっていたのは、四方を4000メートルの崖に囲まれた台地。それが、この場所だ。    

 

 

 

 彼らは、この地に町を築くことを決め、自分達が乗ってきた船を焼き払い、外との交流を完全に断った。

 

「煙を焚け。空を塞げ。外の世界を無くすんだ」

 

 町の連中は「海には人間を飲み込む怪物がいる」と今も信じてるけど、それは、連中の足を引き止めるためにデッチあげられた嘘に違いない。

 

 今も、レター一族は、外の世界の存在を知られることを極端に恐れている。

 

 外の世界を知ると、外に出ようとする者が現れて、また交流が生まれてしまうからだ。

 

 

 

 こうして出来上がったのが、煙突だらけのこの町だ。

 

 あれから200年。

 

 今となっては、こんな歴史があったことも、この町が煙突だらけである理由も、外の世界があることも、町の連中は誰一人知らない。

 

 たった一人の男を除いて。

 

 ここだけの話、3年ほど前に、このことを町の酒場で、ついウッカリ喋っちゃったんだ。

 

 名前は何っていったっけなぁ……たしか、仕立て屋の男だ。


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